【方位磁針で見分けられます】ロレックスの磁気帯びを確かめる手順|スマホは何cm離せばいいのか

以前、ロレックスの精度を自分で測る記事を書いたとき、日差が大きいときに疑うものの2つ目に「磁気」を挙げました。ただ、そこでは2行で済ませています。スマホのそばに置いたとか、バッグの留め具に当たったとか。そういうときに何をすればいいのかまでは書いていませんでした。
自分が持っているのは、サブマリーナー デイト 126610LVと、GMTマスターII 126711CHNRの2本です。どちらも32xx系のキャリバーを積んだ今の世代です。今回はロレックスの磁気帯びについて、公式の資料と日本時計協会の資料を読み直して、疑ったときの手順を順番に並べました。
- ロレックスが磁気帯びしたときの症状と、時計の中で起きていること
- 126610LV・126711CHNRの部品が磁気についてどう説明されているか
- スマホやバッグの磁石を何cm離せばいいか
- 方位磁針を使った確かめ方の手順
- 磁気抜きをどこに頼むか

結論:疑ったら、まず1日測ってから方位磁針に近づけます
先に結論です。磁気帯びは、方位磁針があれば家で見分けがつきます。ただし、いきなり方位磁針を当てても意味はあまりありません。ずれている量が分からないままだと、磁気のせいなのか、巻き上げが足りないだけなのか判断できないからです。
なので順番は、時刻を合わせて1日おく、磁気を出すものを思い出す、方位磁針に近づける、離してもう一度測る、です。それでも戻らなければ磁気抜きを頼みます。保証期間内の時計なら、自分で消磁器を当てる前に買った正規店へ持っていく方がいいと思います。

磁気抜きそのものは、正規店でも民間の時計店でも、たいてい短時間で終わる作業として案内されています。慌てて修理に出す前に、本当に磁気なのかを1日かけて確かめるだけで十分です。
磁気帯びすると、時計の中で何が起きているのか
機械式時計の精度を決めているのは、テンプという部品と、その中にある髪の毛のように細いヒゲゼンマイです。ヒゲゼンマイが一定のリズムで伸び縮みすることで、時計は時間を刻んでいます。
このヒゲゼンマイが磁気を帯びると、巻いている線どうしがくっつきます。伸び縮みする長さが短くなるので、リズムが速くなります。結果として時計が進むわけです。
いちばん多いのは「急に大きく進む」
日本時計協会は、機械式時計が磁気の影響を受けると進みや遅れが起こり、元の精度に戻すには脱磁(磁気抜き)が必要だと説明しています。時計店の案内でも、1日に数十秒から数分単位で進むようになった、という症状がよく挙がります。
ふだん1日に数秒しかずれない時計が、ある日を境に1日1分近く進むようになった。そういう変わり方をしたときに、まず疑うのが磁気です。
止まることもあります
磁気の強さによっては、ヒゲゼンマイが大きくくっついて時計が止まることもあると案内されています。ただ、止まったときは巻き上げ不足のほうがずっと多いはずです。リューズで巻いても動かないか、巻いて動いたのにすぐ極端にずれるか。このどちらかなら、磁気の線を考えます。
ちなみに、電池で動くアナログのクオーツ時計は、磁気から離せば元に戻ると日本時計協会は書いています。機械式は離しても戻りません。ここが違います。今のロレックスの現行品は自動巻きの機械式なので、「離したから大丈夫」とはなりません。
自分の2本は磁気に強いのか、公式の書き方を読んでみました
ロレックスは磁気に強い、という話はよく聞きます。どこまで本当なのか、公式の説明を当たりました。
ロレックスの公式サイトでは、2005年に作られたブルー パラクロム・ヘアスプリング(ヒゲゼンマイ)について、常磁性の合金で作られていて磁場の影響を受けないこと、従来のヒゲゼンマイより最大10倍衝撃に強いことが書かれています。
もうひとつはクロナジー エスケープメントという、テンプにエネルギーを渡す部品です。エアキングの公式資料には、ニッケルとリンの合金でできていて磁場の影響を受けない、と書かれていました。126610LVのキャリバー3235、126711CHNRのキャリバー3285は、どちらもこの世代の部品を使っています。

ただし「何A/mまで平気」とは書かれていません
ここで引っかかったのが数字です。日本の腕時計にはJISの耐磁規格(JIS B 7024)があって、4,800A/mに耐えるものが1種耐磁、16,000A/m以上が2種耐磁です。ところがサブマリーナーとGMTマスターIIには、こうした耐磁の数値が公式に出ていません。
サブマリーナーの取扱説明書(日本語版)も読みましたが、磁気についての注意書きは見当たりませんでした。部品は磁気に強い素材で作っています。でも、時計全体として何A/mまで保証するかは言っていません。公式から読み取れるのはここまでです。
ヒゲゼンマイ以外にも、時計の中には鋼の部品があります。「ヒゲゼンマイが磁気の影響を受けない=時計がまったく磁気帯びしない」とまでは言い切れない、と自分は受け取っています。
ミルガウスだけは数字が出ていました
例外はミルガウスです。1,000ガウスの磁場に耐えるように作られたモデルで、A/mに直すと約79,600A/m。2種耐磁の約5倍になります。名前からして磁気対策のための時計でしたが、2023年に生産終了したと報じられていて、いまの公式サイトの現行モデルには載っていません。
一世代前と中古は、年式で考えます
中古で一世代前のモデル(型番の頭が116や114など)を買った人は、少し事情が違います。パラクロムのヒゲゼンマイが入った時期はモデルによって違うので、型番だけで「磁気に強い」とは決められません。気になるなら、買った店か正規の窓口で年式を聞くのが早いです。

部品の素材は確かに磁気に強いです。でも、耐磁時計として数字を保証しているわけではありません。自分はこの2つを分けて覚えておくことにしました。
磁気を出すものは、何cm離せばいいのか
では実際に、身の回りのものからどれくらい離せばいいのか。日本時計協会が、磁気を出すものごとに0cm・1cm・5cmで時計が影響を受けるかどうかの表を出しています。耐磁表示のない一般の時計の列を抜き出すと、次のようになります。

いちばん大事なのはスマホです。スマホやパソコンのスピーカー、バッグの留め具の磁石は、5cm離せば一般の時計でも影響なしとされています。逆に言うと、1cmまで近づけると、耐磁表示のない時計では影響が出る側に入ります。
スマホは「重ねない」で足ります
5cmというと、手のひらの横幅の半分くらいです。机の上でスマホの隣に置く程度なら届きません。危ないのは、スマホの上に時計を重ねる、同じポケットに入れる、の2つです。
iPhone 12以降の多くのモデルには、ワイヤレス充電の位置を合わせるための磁石も背面に入っています。外した時計をスマホの背面に乗せないこと。これだけ決めておけば足りると思います。
タブレットカバーと磁気ネックレスは、5cmでも足りません
表の中で厳しいのが、タブレットカバーと磁気健康器具です。一般の時計だと、5cm離しても影響ありの側に入っています。
タブレットのカバーは、閉じたことを本体に伝えるために磁石が入っているものがあります。肩こり用の磁気ネックレスやブレスレットも同じです。時計と同じ手首に磁気ブレスレットを重ねるのと、外した時計をタブレットカバーの上に置くのは、避けた方がいいです。
冷蔵庫のマグネットや財布の留め具も同じ種類です
表には載っていませんが、冷蔵庫の扉に貼るマグネットフック、マグネット式の財布やペンケースの留め具も、バッグの留め具と同じ永久磁石です。外した時計を冷蔵庫の扉の横の棚に置いたり、財布と一緒にポケットに入れたりする置き方も、スマホの背面に重ねるのと変わりません。
病院のMRIは別格ですが、外すのが前提です
MRI検査は非常に強い磁石を使う検査です。腕時計を着けたまま検査室に入ることは、そもそもできません。検査の前に外して預けるよう案内されるので、預けたロッカーが検査室から離れているかだけ気にしておけば十分です。
IH調理器は、距離で防げません
もうひとつ、IH調理器は0cmでも5cmでも影響ありです。料理中に手首が天板の上を行き来するなら、そのときだけ外しておくのが確実です。反対に、ACアダプター(コンセントに挿す充電器の本体)は0cmでも影響なしとされています。ワイヤレス充電器とは別物なので、そこだけ分けて考えます。

表を並べてみると、ACアダプターは0cmでも影響なしでした。気をつけるのは、スマホの背面と、カバーやバッグの留め具のほうです。
確かめる手順は5つです
ここからが手順です。道具は、秒まで合っている時計(スマホの時計表示で十分です)と、方位磁針の2つだけ。方位磁針は数百円で買えます。
1. 時刻を合わせて、1日おく
まず、ずれている量を数字にします。秒まで合わせて24時間後に見比べるだけです。測り方の細かいところはロレックスの精度を自分で測る手順にまとめています。
ロレックスの公式の精度は1日-2〜+2秒です。数秒の範囲なら、磁気の線は薄いと考えていいと思います。1日に数十秒以上進んでいたら、次に進みます。
白状すると、自分の2本はまだこの日差をきちんと測っていません。精度の記事を書いたときも「まだ数字を出していない」と書いたままです。なので今の2本が帯びているかどうかは、実は確かめていません。
2. 磁気を出すものを思い出す
ずれ始めた日の前後に、スマホの上に置いた、タブレットのカバーに乗せた、バッグの留め具のそばに入れた、ということがなかったかを思い出します。思い当たる節があれば、磁気の疑いはかなり濃くなります。
思い当たらなくても、方位磁針は当ててみる価値があります。磁気は目に見えないので、本人が気づかないまま帯びていることもあるからです。
3. 方位磁針に時計を近づける
方位磁針は、スマホやパソコンから離れた机の上に平らに置きます。針が北を向いて止まるのを待ってから、腕から外した時計を、文字盤を方位磁針に向けたまま10cmくらい離れたところからゆっくり近づけます。
数cm手前で針がぐっと時計のほうに引っ張られたり、大きく振れたりしたら、磁気帯びしている可能性が高いです。時計を左右に動かしたときに針がついてくるかも見ます。文字盤側で反応がなければ、裏返して裏蓋側でも同じことをします。
スマホの方位アプリで代わりにやるのは、おすすめしません。スマホ自体に磁石が入っているので、確かめているつもりで時計をスマホに近づけることになります。本末転倒です。
4. 離して、もう一度1日測る
方位磁針が反応したら、磁気を出すものから離した場所で、もう一度1日測ります。機械式は離しても戻らないので、ずれ方が同じなら磁気帯びでほぼ間違いありません。
方位磁針が反応しなかったのに大きく進む場合は、磁気以外の原因を考えます。巻き上げ不足や置き方の違い、部品の不具合です。ここから先は、家でできることはあまりありません。
磁気以外で、急にずれる原因
方位磁針が反応しなかったときに先に疑うのは、次の3つです。
- 巻き上げ不足。今の32xx系のパワーリザーブは約70時間なので、2〜3日外していたあとは、ゼンマイがほどけかけた状態になり、精度が落ちやすくなります
- 夜の置き方。文字盤を上にするか、横に立てるかで、1日のずれ方が変わります
- 落とした・ぶつけたあと。この場合は家では何もできないので、正規の窓口で見てもらいます
巻き上げ不足だけなら、着けて1日過ごせば戻ります。リューズで手巻きしてから測り直すだけでも、切り分けにはなります。
5. 戻らなければ、磁気抜きを頼む
磁気帯びがはっきりしたら、磁気抜き(消磁)を頼みます。どこに頼むかは次の節で書きます。
磁気抜きは、どこに頼むか
保証期間内なら、買った正規店へ
ロレックスには5年の国際保証があります。自分の2本は2024年11月と2025年1月に買ったので、それぞれ2029年と2030年まで保証期間内です。この期間なら、まず買った正規店に持っていって、精度がおかしいと相談します。
正規の窓口には、正規品販売店とサービスセンターの2種類があります。窓口の探し方や持ち込みの流れは、ロレックスの修理はどこに出すかの記事にまとめました。
費用は、公式サイトで「消磁だけでいくら」という料金表は見つけられませんでした。見積もり次第です。磁気抜きだけで済むのか、点検が必要と言われるのかで変わるはずです。
市販の消磁器は、保証期間中は使わないつもりです
通販では、時計を乗せてボタンを押すだけの消磁器が数千円で売られています。民間の時計店の解説でも、自分で磁気抜きをする方法として紹介されています。
ただ、自分は保証期間中のロレックスに使うつもりはありません。使い方を間違えると、かえって磁気を帯びさせることがあると時計店が注意しているうえに、磁気が原因でなかった場合は何も直らないからです。正規店に持っていけば、磁気かどうかの判断から見てもらえます。
保証が切れたあとや、中古で買った時計
保証期間が過ぎた時計や、並行店・中古で買った時計なら、民間の時計店に頼む選択肢も出てきます。磁気抜きだけなら数千円程度と案内している店が多いです。
磁気抜きをしても戻らないとき
消磁しても精度が戻らない場合は、磁気以外の不具合か、帯びていた期間に別の部品へ影響が出ている可能性があります。このときはオーバーホールの相談になります。自分はまだ一度もオーバーホールに出していません。頻度や費用の考え方はロレックスのオーバーホール頻度の記事に書いています。
帯びさせないために、置き場所を決めておきます
磁気帯びは、気をつけていれば避けられる種類の不調です。毎日の動きの中で、時計を外して置く場所を1つ決めておくのがいちばん効きます。
- 外した時計は、スマホを置くトレーとは別の場所に置く
- ワイヤレス充電器の上や、スマホの背面に重ねない
- タブレットのカバーやノートパソコンのスピーカーの上に置かない
- バッグに入れるときは、留め具の磁石から離れた内ポケットにする
- 磁気ネックレス・磁気ブレスレットとは同じ手首に着けない
着けたままの時間で気をつけるのは、ノートパソコンです。キーボードの左右にスピーカーがある機種だと、手首がちょうどその上に来ます。長時間の作業なら、そのときだけ反対の手首に着け替えるだけでも距離は取れます。
まとめ:磁気帯びは、測ってから方位磁針で確かめます
ロレックスのヒゲゼンマイと脱進機は、磁気の影響を受けにくい素材で作られています。ただ、サブマリーナーやGMTマスターIIに耐磁の数値は出ていないので、スマホやバッグの磁石とは5cm離す、重ねないを守っておくのが無難です。
急に大きく進むようになったら、まず1日測ります。それから方位磁針に近づけます。反応があって戻らなければ、保証期間内は買った正規店に持っていきます。この順番で動けば、慌てて修理に出すことはなくなります。
自分も、まずは2本の日差を測るところから始めます。数字が出たら、精度の記事のほうに書き足します。









